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「教えてくれてもいいだろ??」
――まただ。全く、めんどくさい限りだ。
俺はこういう系統の話題の楽しさが全くもって分からない。他人の好きな人の情報を聞いて何が楽しい?何が面白い?そもそも俺にはそんな人いないと伝えてあるはずだ。それ故に今のこいつのようなこういう絡みはいっちばんだるい。こんな話よりも早くゲームをしたいものだ。
「前にも言ったはずだけど、俺にはそんな人いない。そんな話よりも時計みな?授業始まるぞ?」
あいつは半笑いで平謝りしながら、そそくさと自席に戻って行った。
まだ週の折り返しというのに疲れた顔をした数学教師が入室してくる。
「それでは授業を始めるぞー。」
午後からの授業という名の〝バトル〟開始の合図を放った。
まゆ episode1
「教えてくれてもいいだろ??」
ふと耳に入る言葉。
いや、耳に入ってくるという表現もおかしい。
ずっとその声の発信源。つまり、男子のグループの話題に聞き耳を立てていたから。
だから、偶然的な表現よりも必然的な表現が正しいということ。いやいやいや!そんなことは今はどうでもいいこと。
右耳に神経を全集中させる。
りょうくんの回答は無い。
またかな?そう思い、目の前の作業に意識を戻そうとしたその時、りょうくんの口が動く。
再び神経を全集中!!
しかし、その答えは期待したものでは無かった…
思わずついちゃうため息。
「まゆ…またまた、りょうくんでしょ〜??もう告っちゃいなって!誰かに取られてじゃ遅いんだよー!」
親友のエリが小声でいじってくる。
エリはいつもそうだ。恋なんてしたことないから簡単に言える。まぁ、私も初めてなんだけど…
「でも、振られちゃうかもだよ。今はそっちの方が高そう…」
小声で返す。
「だ・か・ら取られちゃうぞぉー笑笑」
「でも、さっきだって…」
私たちの小声のやり取りは続く。
と言っても同じようなやり取りの繰り返しだけど。
そうした言い合いがヒートアップし、着地点がお互いに見つからなくなった辺りで授業が始まった。
りょう episode2
眠たくなるような2コマの授業を終え、ようやくホームルームだ。
教卓では担当教科英語の担任が日本語でまくし立てている。とにかく一刻早くゲームがしたい。家でしないといけないこと(と言ってもゲームのことだが)を考えていることをよそに担任の口は止まらない。早く帰りたいのに。
数分は語っていただろうか?ようやく解放され、俺は急いで家路に着いた。これからの時間の方が俺の本番とも言える。
まゆ episode2
やっと午後の授業が終わった。今日のはかなり難しかったから、ノートは美術作品と化している。にしても、この先生は本当に話が長い。ふと、りょうくんに目を移すとやっぱりなにかを考え込んでいる。
――何を考え込んでいるのかな?
一昔前はこれでいっぱいだった。だけど、今は違う。りょうくんはさっきまでの授業の振り返りをしている。この前の班活動で同じになった時に勇気を振り絞って聞き出した数少ない情報のひとつ。りょうくんはいつもクラス順位は1位。勉強においてこのクラスに右に出られる者はいない。ほんとにすごい。
って、またまた!今はホームルーム中だから、担任の話に意識を戻さないと。
まゆの意識が現実に帰ってくると、これからの話をしていた。
――そっか。そろそろ卒業式だ。
いつも言葉数の多い担任が卒業の話になると思うところが沢山あるのだろう。口が開きっぱなし。
5分程話をしてこの日は終了。エリとお喋りをし、エリを玄関まで見送る。そして、体育館へと急いだ。部活自体は終わってはいるのだけど、後輩との関わりは楽しいし、何より、部活が大好きだから引退してからもちょくちょく顔出しをしている。なんだかんだで今は幸せなのかもしれない。
りょう episode3
「よっし!これで3体目!!」
やっぱり俺の居場所はここ。何体も掃除していくのは快感を伴い、そして、活躍すればするほど輝けるのだから。最高だ。ようやくこの時間にたどり着いた。このために生きていると言っても過言では無い。
先程倒した友達が通話先で悔しがる声が聞こえる。だがそんなことお構い無しにどんどん続けていく。
――そーいえば、今日の課題多かったから俺、先上がるわー。
このログを残して最後の一人が抜けていった。
それからどのくらい時間が過ぎただろうか。1人でもゲームをし続けてもう22:00だ。
――そろそろ宿題やるか。
頭の良さには人一倍自信があるため、焦ることなく、心に余裕を持って机に向かった。
頭の片隅でこの環境が作るルーティンに幸せを感じながらペンを走らせて行った。
まゆ episode3
今日も後輩ちゃんをたくさん見ることができた。それに成長スピードが早くて親の気分だ。鼻歌と共に足取りも軽くなっていく。
――エリにLINEしよ。
そうした軽くかつ、いつものノリがまゆの晴れたるんるんな心を曇らせるとはつゆ知らず、画面に指を滑らせていく。
――えっ…
そう。あろうことか、課題の一部を学校に忘れてきてしまったのだ。取りに帰る気力もすっかり無くなっている。明日朝イチコースが確定しました…
重くなった足を止まらないように1歩ずつ確実に進めていく。
止まるとそのまま停滞しそうだから。
数え切れないため息をついて、ようやく家に着いた頃にはもう真っ暗…
徹夜コースだよ。
そう思いながら夜の支度を済ませていく。
「さてと。やりますか。」
携帯なんていじってる暇は無い。課題は遅い方だから、早く終わらせて忘れてきた分の課題のために早く寝なきゃ。
スマホが視界に入らないように影で充電器にさして、エンジンをかけた。
りょう episode4
今日の宿題はみんなの言う通りなかなか手強かったかもしれない。
けれどもいつものように簡単に片付けてしまったため、少し優越に浸りながら、ページを閉じた。
…?!
思わず2度見。
名前が違う。そう。他人のノートを持ち帰ってきてしまった。しかも、解いてしまった。なんてことだ…めんどくさい事になった。よりによって女子と取り違えだ…
「ごめん。ノートを取り違えたみたい。」
ひとまず相手に報告のLINEを入れる。
というより、俺のノートはどこだ…?
先程の優越が嘘かのように焦ってノートを探し始めた。
まゆ episode4
「ふぅ。やっと終わった。」
というのもプリントだけだけど。まぁ、進まないよりマシ!頑張った!すごい疲れたけど達成感でいっぱい。
だから、清々しい気持ちで布団に入ろうと思う。
明日の朝の課題に向けて早めに布団に潜り込んだ。
りょう episode5
朝起きた時の気分は最悪だった。
俺のノートは見つからなかったから恐らく学校だろう。そして、俺が持ってたノートのやつは既読すらついてない。
これだから女子は苦手だ…
もれなく朝イチで話しかけることが決定してしまった…
なんの仕打ちだろうか。朝イチで登校する羽目になり、朝のゲーム時間も減ってしまった。気分が重く、登校する足取りも重くなる。
電車登校の俺は、学校に着くともちろん誰もいない時間だった。
そして、机の上にあるノートに視線が集中し、八つ当たりも甚だしいが机上のノートに最大限の憎悪を込めた睨みをきかせた。
まゆ episode5
大変なことが起きた!
寝坊してしまった!!お布団サイコー!
ってそんなこと言ってる暇はない!!
急いで支度を済ませ、学校へと急ぐ!
…と言っても電車なので乗ってしまえば私に急ぎようは無いんだけど。
着いたのはかなり早い時間だった。
一番乗り?!…っと思ったら誰かがいる。
「誰だろう。」
私の一番のりを邪魔する人は!!何をしに来たのか趣旨も忘れ1番でなかった悔しさを噛み締めながら、相手の様子を見る。
私はエリから忍者と呼ばれた時代もあるほど存在感を消すことが出来る。なんか、どーでもいい特技をフル活用しながら相手にバレないように自席に着く。
…ノートが見当たらない?なんで??
あまりに捜し物に熱中していたため、忍者ごっこをしていたことも忘れていた。前の席の子。つまり、一番乗りの子が振り向k…?!&△☆?!
えぇぇ…りょうくん?!
頭が混乱する。まさかの一番のりはりょうくんだったのだから。
頭の整理がつかないまま、機能が停止してしまう…
2人きり?えっ??なんで?!りょうくん朝はいつもギリギリなのに。(私もだけども…)
頭が落ち着いてきたあたりでりょうくんが話しかけていることに気づいた。…そして、話しかけられた事実を認識しまた頭がショートした…
りょう episode6
課題をしていると背後に誰かの気配を感じた。
後ろに視線を移すとノートの持ち主がいた。
完全に八つ当たりであるものの、LINEに既読すらつけなかったことで話しかける羽目になったことに多少の怒りを覚えていた。
そして、そのイライラを堪えながら話しかけるものの、相手の反応は無かった。
そこに対して女子の難しさを痛感しながら、ノートを手渡して会話を終わろうとする。
伝わっているのか分からない相手にノートを持ち帰り、解いてしまったことを伝え、課題に戻ろうとしたその時、相手は自らのほっぺたをつねりはじめた。
目の前で起きていることに混乱し、女子の掴みどころのなさ、そして何よりその行動がおかしくて、思わず笑みがこぼれた。
課題に戻ってからのその不思議さに笑いが止まらず、気づけばイライラも消え去っていた。
まゆ episode6
ここは会話をしないと!!貴重なチャンスだから!!話を聞かなきゃ。
ふと我に返り、意識を呼び戻す。
りょうくんは何かを手渡そうとしている。
…のーと?私のノートだ!!
探し物が見つかった喜びと好きな人からの手渡しと言うだけで気持ちが舞いあがる。
夢のようなことに意識が長くはもたない。
私のアドレナリン少し落ち着いてー!!
もう何が何だか分からない。
ん…?夢のような…?
もしかして、夢?!そうか!夢なら全てが納得がいく。待って待って!課題があるのに。私、早く起きて!!課題が終わらなくなっちゃう。
両の手で自分のほっぺたをつねる。
目の前のりょうくんは笑いを堪えながら課題に戻って行った。
りょうくんの背中を眺めながらガッカリしていると、痛みを感じた。
いったぁ…
…ということは?これって現実?!
りょうくんは未だに笑いをこらえているようだ。先程の行為を振り返り、自らの奇行ぶりに気づき、恥ずかしくなる。
だけど、そんな恥ずかしさも一瞬で吹き飛んだ。
現実ということは、りょうくんとの会話も、この空間も、全てが現実なのだから(思わず語彙力も無くなる)。
そして、ノートを開いて喜びが爆発する。宿題が終わっているという事実と、眼中に映されているりょうくんの文字に脳内がエレクトリカルパレードになる。感情が大渋滞していく。
「このノート家宝にさせていただきます!!」
そんなことをりょうくんに言えるはずもないけれど、この幸せを誰かにシェアしたくてウズウズしてしまう。真っ先に脳内に浮かんだエリにLINEすることに決めて、昨晩ぶりにスマホを開く。
直後、私はスマホの通知を見て、不意に声が出てしまった。
鼓動が早くなる。息が詰まりそう…
いや、さっき確認した通りこれは現実…
ということはこの通知はりょうくん本人?!
昨日の私自身を責め立てる。
そんなことより、なにか話さないと!
思いつく限り話題を考えては、継続性のなさから断念するという行為を繰り返し始めた。
りょう episode7
さっきから後ろが騒がしい。
いや、一人しかいないんだが。
急にほっぺをつねり出すから不覚にも笑ってしまったけど、実は本物の変人なのかもしれない。
でも、面白さから見ていたい気もする。
後ろをふりかえって行動を観察してみたい気がする。
今度は何をしているのだろう。興味が湧いてくる。
止まっている自分の手を見て自分が集中出来ていないことに気づいた時、肩をぽんとたたかれた。
まゆ episode7
恐る恐る伸ばす手はとても震えている。
ただ、話しかけるだけなのに何故だろう。
とても心が落ち着かない。
そして、りょうくんの肩をたたく。
鼓動がとても早い。
肩をたたかれ、振り向くりょうくんの動きはスローモーションのように感じた。
「りょりょうくん、ノートありりとう。」
あーー!大事なところで噛んじゃった!!
りょうくんは私のセリフを聞いて、
笑っている。
言葉1つ伝えるだけで噛んでしまう私のことをどう思ったんだろう。
羞恥の思いでいっぱいになった。
りょう episode8
振り向くと、ノートの持ち主が何かを言いたそうに見ている。
何を考えているのだろう。次は何をする気なのだろう。
俺の中で先程の1件もあり期待のハードルがあることに気づく。
そして、彼女が口を開いた。
俺はそれを聞くやいなや笑みがこぼれてしまった。
名前が噛まれたことくらいはいつもの俺なら耐えている。だが、それに加えて
ありりとう。
この言い間違いが、なぜだかとても可笑しかった。
クールでいたつもりの教室内で、こんなに笑ってしまうなんて。
この朝からの一瞬で、いつもは見れない姿を見たせいだろうか。
この人の面白さを知った。
まゆ episode8
りょうくんが笑っているとこを見ることは良くある。
笑っているとこさえもクールでミステリアスなのだ。
でも、今の笑い方は感情があった。
いつも遠くから見ていたりょうくんが、今自分の近くで、今まで見た事のない顔を見せてくれている。
このことに気づいた時、私自身の恥ずかしさも忘れ、共に笑ってしまった。
りょう episode9
授業を聞いていると、朝一に学校で感情的に笑ってしまったこと、それもよりによって女子と。そう振り返り、途端に恥ずかしくなってきた。
それにしても、あそこまで挙動不審になられると人間は面白おかしくなるんだなと思った。
お得意の解析を脳内でめぐらせながら、
耳に入りくる話を聞き流した。
まゆepisode10
またまた長くなりゆく担任の話を聞き流していた。
いや、今日の聞き流し方はいつもと違う。
だって、今日はりょうくんと朝から話せたから。
朝のことをエリに話すと、案の定からかわれた。
やっぱり恥ずかしさを感じる一方、不思議な高揚感で、未だに覚めないでいる。
このままずっと、覚めないでいれたらな。
まるで夢を見ているような不思議な感覚を満喫していたい。
今日は1日ずっと、この調子。
しかし、ふと耳に飛び込んできた担任の一言で現実に戻された。
そうだ。言われるまで気づけなかったけれど、卒業は来月だ。
気づけば来月まで迫っていた。
りょうepisode10
連勝記録にガッツポーズを取り、
ふと時計に目をやる。
もう、9時か。
徐ろにスマホを開くと、
朝の子から、連絡が来ていた。
ふっ
朝のことを思い出すだけでも笑ってしまう。
今まで生きてきて、心の底から笑えた人間に会えたのは初めてかもしれない。
そう思いながら、トークを開く。
文面を見て、俺は再び心の底から笑った。
まゆ episode10
いつものように、後輩たちとの練習を終え、帰る途中、エリから連絡が入った。
「今日は笑っちゃってごめんね💦けど、まゆの恋応援してるよ!!ファイト!」
私はこのメッセージを見て、朝のりょうくんを思い出し、距離を縮めるなら今しかないと思った。
数分後、私はりょうくんにメッセージを送っていた。
りょうepisode Final
この笑いはなんだろう。
喜びに近いものなのかもしれない。
とにかく、いつもの取り繕った笑いとは違う。
俺は再度文面を見て、まゆに返信をした。
まゆepisode Final
課題をしていると、机の上のスマホが震える。
スマホの画面を見て私は飛び跳ねた。
「OKです。」
この4文字が私にとって、大きな収穫であったことは言うまでもない。
あと1ヶ月だけの短い学校生活が濃く、充実したものになることを想像しながら、私はペンを走らせた。
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