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大和はかっこいいし、モテる。
だけどこころのどこかで、モヤモヤが残る。
誰かに取られそうだから?
私が好きな理由が分からないから?
モヤモヤが広がるままに大和に答えを求められ、
漸く口を開いた。
「わ、わたし、自分でも自分の心が分からないのっ、」
笑い飛ばされることを覚悟で大和の方を見ると、
大和は予想に反し顔を赤らめて言う。
「心の複雑さに言葉が足りてないだけさ。
足りなければ2人だけの言葉を作ればいい。
今の俺だって、こう見えて複雑だよ。
ただ、ミユに対する思いは〝好き〟という言葉にできたから伝えてるだけ。これから、少しずつ気持ちを噛み砕いていけばいいのさ。」
このビジュで、この優しさはもはや反則級だと思う。
「大和くん!…ううん。やまと!私の今の気持ちはね、
ドキときめいてるよ!」
この返しには流石に大和も微笑む。
「それはつまり、好きに近しい意味だって解釈するからな?」
そう言って大和が私を抱きしめた時から私たちの幸せライフは始まった。
いや、始まるはずだった…
…ろ!起きろっ!おい!授業中だぞ!!―――
私の完璧なシナリオの下、作成された夢はあっけなく幕を閉じた。
「最近、朋華さ、集中力無さすぎるよ笑笑」
舞が、今日の話を面白おかしくいじってくる。
「今回は誰の妄想だったのー??かずくん?ゆうまくん?もしかして…太田くん?」
舞が探りを入れてくる。…いや!にしても、太田くんだけはない!
太田くんは、呼び方からもわかるように1人だけ苗字で呼ばれるほど、クラスでもトップクラスの問題児だ。
あんなにおっかない人と一緒だなんていくら妄想の中でもごめんだ。
私はムッとした顔を向ける。
すると舞は何かを思い出したかのように笑みを浮かべ、
続ける。
「やっぱり朋華の王子さまは友一さまだよね!」
その名前を聞いて、私は顔を真っ赤にする…
そして、私は漸く口を開いた。
「そ、そんな、私が友一くんと釣り合うわけなくて、
例え妄想だとしてもおこがましくて…」
私の返答が来て余程嬉しいのか、舞はニヤついている。
友一くんは、幼稚園からの幼なじみでとっても仲が『良かった』
今となっては背も高く、スポーツ万能で到底私なんかじゃ届きそうにもなくなってしまった。
ちなみに舞はというと、小学生中学年の頃からの友達で、今じゃ親友だ。
小学生低学年の頃の事件により、私が友一くんと距離を置いた経緯を知る由もない。
だからこそ、私があの友一くんと幼なじみなことに漬け込んだ話を遠慮なくしてくる。
少しは遠慮してよぉぉ…
そうは思えど舞は知らないのだから仕方もないか。
舞の何かを企む顔を見ながら次の質問に身構えていると、舞が唐突に前を向いた。
ふと時計に目をやるもいつもの舞ならまだ話を盛り上げる時間帯だ。
…ということは、、、
気づかれぬように、顔を固定したまま、
横に視線のみをずらす。
そう。隣はあいつ。つまり太田だ。
席替えがくじとはいえ、
確率は相当なはず。
私はどれだけ、くじ運が悪いのだろう…
まぁ、私がどんなに奇行や愚行や怠惰でも、
軽い注意で済んでいるのは、
私が平々凡々でごくごく普通な生徒だということと、
隣が太田だからだろう。
少し感謝をしかけた時に、先生に目をつけられるのも、
太田が隣にいるからだということにも気づいて、感謝もどこかへ行ってしまった。
次の瞬間から、私の心の中ではいつもの憎悪の感情が渦巻いていた。
そして、現状に落胆しながら次の授業に入った。
(友一くん今、何してるのかなぁ。)
そんなことを考えながら、隣のクラスの時間割を思い出す。
今は確か体育だ。絶対かっこいいに違いない。
ほかの女子が見て惚れるのを想像するところは実に容易い。それほど魅力的なのだ。
ほかの女子に嫉妬しながら、私は友一くんの何でもないという事実に悲しくなる。
あの時、私が正直になれていればなぁ…
悔やんだって戻れない。
あの時と言うよりあのころ。
あの事件だ。
小学生低学年の頃。
私と友一くんは、
幼稚園からエスカレーター式で同じ小学校へと入学した。
家が近かったこともあり、母親同士も仲が良く
同じ幼稚園の子たちも羨むほどの仲の良さだった。
それだけなら良かった。
友一くんは、その頃から群を抜いており、
整った顔立ちに加えて足が抜群に早かった。
つまり、爆モテ男子の誕生である。
そんな友一くんとの距離が近いと、周りもはやしたてる。
男子は友一くんを妬んでいたのだろう。
そこで私たちの関係に付いた名前が、
朋華と友一で、「とも」カップルだ。
ほんとにくだらない。
だけど、私はその呼び方がずっと嫌だった。
そもそも、友一くんは「ゆういち」であり、「とも」ではない。こじつけだ。
それでも、いじってくる彼らが子どもであるように、
私もその時は経験の極浅な子ども。
私は照れてしまい、友一との距離を置き始めたのだ。
そして、あそこまで仲が良かったのに巡る時間の中で色々通して、私たちは今となっては疎遠になってしまった。
「あの頃に戻れたらなぁ。」
不意に声が漏れる。
…しまった!!
聞かれちゃった?!周りを見渡す。
みんな真面目に授業を聞いている。
よかっ…ただ1人を除いては。
そう、太田だけ、くすくす笑っていた。
こいつに聞かれてしまったァ…
私は脳内で太田のことを絞めた。
もちろん、目の前の太田はケロッとしている。
それが余計に腹立たしい。
大体、太田も太田だ、
ともカップルなんて言い始めたのは何を隠そう
こいつなのだ。
悔しさがいっぱいだが、小学生の頃のことだ。
どう足掻いても戻ることは無い。
私の慈悲深い心で許してあげよう。
そういうことにして、慈悲という建前の
蔑んだ冷ややかな視線を送る。
すると途端に太田は視線に気づき、
なんと一瞬寂しそうな顔をした。
というより、したように見えたと表現するのが正しいのか。
あの太田が悲しんだ?
私は混乱した。
ことが追いつかない。
私は太田に対して冷ややかな目で見たつもりだ。
それを太田が感じ取った?、
共感の欠片があの単細胞にも残っていたということか。
久々の人間らしさに触れて少し見直した。
そして、私の世界に戻…りかけたが、よく良く考えれば、
太田が、私のひとりごとで笑った確証もないのだ。
なんて、自意識過剰な…
自分で自分のことが恥ずかしくなった。
次の授業は科学だ。
うちの学校は理数系に力を入れている。
そのため、理科と数学に限り、
選択制の授業を取るため、他クラスとの合同授業だ。
私はもちろん友一くんと同じの物を選んでいる。
足元にも届きはしないが、同じ教室で
同じ授業というので私は幸せだ。
あのにっくき太田ももちろん居ない。
移動教室を終えて、席に着いていると、
体育の着替えを済ませ
輝いている友一くんが入室された。
こ、神々しいいい!
なんて神ビジュ!
語彙がなくなっていく。
さっきの授業のことをふと思い出す。
友一くんとカップルだなんて言われてた時期もあったんだなぁ。
今じゃ眺めるので精一杯なのに。
なんだか、私は少し寂しくなった。
この授業は幸せだ。友一くんを眺めながらできるから。
だけど、あんまり眺めすぎるとまた良からぬ噂がたってしまう。
今は我慢我慢…
「…か。」
ん?
「ともか。」
友一くんが私の名前を呼んでくれている。
…?!呼んでくれてる?
「ふぇい?!」
思わず声が裏返り変な返しが出る。
友一くんはキョトンとした顔をして、
堪えていた笑いが吹き出していた。
恥ずかしい…
穴があったら入りたいよ…
ところで、なんで私なんかの名前を呼んだのだろう。
不思議に思い聞いてみる。
今日の夜はなかなか寝付けなかった。
日中の出来事が脳内でぐるぐるしている。
「とっ、ところで!なんの用事?」
意を決して聞いて言葉に友一くんは、たった一言。
「ううん。久々に朋華のこと呼んでみただけ。」
よ、よよよよ!呼んでみただけ?!
しかも、呼び捨て?!
なんのご褒美だろうか。
私はその一件以来、心ここに在らずで、
手に物つかなかったというのに。
私がどれだけ貴方のことを想い、
何度泣き明かした夜があることか。
幼なじみということで、掴めない中で、
近くても遠い距離感にどれだけ悩んだことか。
「ほんっと。ずるいなぁ。」
ふと呟いていた。
私の中のわだかまりが
少しずつほぐれていくことを感じながら、
幸せに包まれながら、重たいまぶたに身を委ねた。
次の日の朝、心臓が止まりそうになることを
知る由もない私は日々のルーティンと化した
スマホを開く。
新着メッセージがあります。
―おはよう― 友一
脳が正常に動けと言う方が無理だ。
今朝からずっと頭がぼーっとしている。
「おはよう」
聞きなれたはずの単語が、何故か染み渡る。
きっと、大好きな人の言葉には
麻薬のような効果があるのだろう。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
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